これまでのあゆみ

演奏会詳細

プロムナードコンサート 2006年 春

日時 2006年4月13日(日) 14:00開演
会場 行徳文化ホールI&I
曲目 ブリテン/シンプルシンフォニー 作品4
ブラームス/セレナード第2番 イ長調 作品16
ハイドン/交響曲第99番 変ホ長調

曲目解説

ブリテン/シンプルシンフォニー 作品4
エドワード・ベンジャミン・ブリテン(1913-1976)は、20世紀イギリス音楽を代表する作曲家の一人であり、管弦楽曲からオペラに至るまで、多くの作品を世に遺しました。特定の主義に固執する事なく、自身で培ってきたセンスと、旋律を生み出す才能を生かして創られた彼の作品は、今日の我々にも親しみやすいものに感じられます。
本日演奏する「シンプル・シンフォニー」は、自らが少年期に書いた小品を素材に用い、弦楽用に、ブリテンが20歳の頃に完成させた作品です。旋律の美しさもさることながら、どこかユーモラスで、またシニカルな匂いが漂う。

シンプル=無邪気な音楽

4つの楽章から成るこの「シンプル・シンフォニー」は、「シンフォニー(交響曲)」と付されているものの、軽妙で遊び心に富んでいます。またそれぞれの楽章には「騒がしいブーレ」、「おどけたピツィカート」、「感傷的なサラバンド」、「浮かれ気分の終曲」と何やら暗示的な題が付けられており、少年・ブリテンの機知とユーモアが作品全体に散りばめられています。
元気の良いアレグロの第1楽章、ピチカート(指で弦を弾く奏法)の音が跳ね回るように追いかけっこをする第2楽章、哀愁と激情の旋律が響き渡る第3楽章、迫りくる炎に追われるかの如くせわしない終曲…
舞台上から聴こえてくる、美しく可愛らしい旋律に、(はたまた、時折響く弦の破裂音にも)耳を傾けて頂けたら幸いです。(ヴィオラ・T)

ブラームス/セレナード第2番 イ長調 作品16
ヴァイオリンがない!?ステージを見て驚くでしょう。ブラームスが選んだこの編成により、同時期のセレナード第1番の輝く明るさと比べ、第2番は少しくすんだ、しんみりとした明るさです。この編成のためか実演の機会もCDも極端に少ないのが残念。
"セレナード"はこの頃には夜の野外音楽という役目を終えていて、ブラームスもこの曲を交響曲に見据えた管弦楽法の練習の意味も含めて作曲しています。しかし、同年のピアノ協奏曲第1番初演が失敗し、音楽の中心とした総合芸術を目指すリストらの流れと現代以上のベートーヴェン崇拝とで純音楽へのハードルが高くなっていた時代背景の中、完璧主義で慎重な性格のブラームスは次の管弦楽曲の発表までに15年を要したのです。と言っても26歳という"ブラームスとしては若い頃"のこの作品、既にどこを切ってもブラームス。
作曲された頃は他にも熱烈な恋愛の末の婚約破棄などブラームスにとって失意の時期ですが、曲に拭い難い影や諦めは感じられず、むしろ作曲の地、豊かなデトモルトの森が慰めとなって表れているのかも。
牧歌的な優しい喜びに満ちた第1楽章、一番初めのクラリネットとファゴットの旋律、すぐ後のフルートの3連符の旋律、しばらく後にクラリネットに出るリズムの効いた旋律、この3つの要素を覚えて聴くと楽しいです。若さとユーモアに溢れた第2楽章、3拍子なのに2拍子に聴こえるのもブラームス的。静かな森で物思いに耽る様な第3楽章、物憂い悩みと美しい憧憬とが寄せては去ってゆく。長調ながらどこか屈託のある第4楽章、"メヌエット"とはいえ6拍子。楽しく情熱的な第5楽章、ここでピッコロも加わって一気に華やかに。(ファゴット・A)

ハイドン/交響曲第99番 変ホ長調
この1790年に、ハイドンが楽長として長年仕えていたエステルハージ候が亡くなり、彼は侯爵家を去りウィーンに居を構えました。売れっ子音楽家ハイドンを迎え入れようと様々な人が声を掛けましたが、その中でヴァイオリニsトにして興行家のヨハン・ペーター・ザロモンの招きに応じて、ハイドンは1791 年〜92年、1794〜95年の2度に渡りロンドンに滞在し、計12曲の新作交響曲を発表する機会を持ちます。1793年に作曲されたこの交響曲は、 1794年2月10日の2度目のロンドン訪問の最初の演奏会で初演され、絶賛をもって迎えられました。
第1楽章は、変ホ長調の力強い主和音の伸ばしで開始されます。5年前に作曲された後輩モーツァルトの交響曲第39番や、16年後に作曲される弟子ベートーヴェンの「皇帝」協奏曲などと共通する、変ホ長調を象徴する開始です。この曲で、ハイドンは交響曲で初めてクラリネットを用いましたが、まだ補助的な用法ながら、やはり39番交響曲を思い起こさせる印象的な響きが聞かれます。第2楽章では、美しく物悲しい主題が弦楽と木管合奏で対比されます。この頃から一般的になってきた、緩徐楽章でのトランペットとティンパニの使用が、この楽章でも大きな効果を上げています。第3楽章は、優雅と言うよりは荒々しく前へ進もうとする主部など、従来のメヌエット楽章が、ベートーヴェン的なスケルツォへ変化していく途上にある曲です。第4楽章は、これまた39番交響曲とよく似た構造をもつ主題によって開始されます。ハイドンに師事していた当時23歳のベートーヴェンは、この楽章の中間部で繰り広げられるめくるめく対位法的展開を筆写して勉強しています。ハイドン特有の意表をついたフレージングや、同時代の音楽家達へのリスペクトなど、豊富なアイディアが息もつかせぬスピードで展開され曲を閉じます。(フルート・K)

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